カナシブリン

主にシンデレラガールズについて思った事をつづっていきます

認められたいからではなく、届けたいから   あの時と今の "ありすがそこにいた"

2015年の11月29日、橘ありすにとって初めてのソロ曲「in fact」がライブで初披露され、終演後にはTwitterのトレンド入りを果たしました。

佐藤亜美菜さんが橘ありすとして立った初めてのステージ。彼女の歌う姿は、"ありすがそこにいた”と、多くのPに言わしめる程のパフォーマンスでした。

3rdライブでの初披露以来、「in fact」は幾度か周年ライブで披露され、そのたびにTwitterのトレンド入りを果たしてきました。回数を重ねるごとに見せ方も変化し、1回1回を特別なものとして人々の記憶に刻み込んでいます。

 

3年9ヶ月と少し。

シンデレラガールズの3rdライブが開催されてから、再び同じ会場へシンデレラガールズが立つまでに経過した期間です。

9月3日に開催された7thライブ幕張公演のDAY1にて、あの日と全く同じ会場で、今度は橘ありすのソロ2曲目「to you for me」が初披露されました。

ステージの形は違いましたが、再びセンターステージで、そして佐藤亜美菜さん1人での披露でした。

 「in fact」のアンサーソングとも言えるこの曲は、あの時とほとんど同じ形で披露されることになったんです。

 

終演後、感情の乗った歌声と姿に感動したという声が相次ぎ、今回は「to you for me」がTwitterのトレンドに入りました。

結果だけ見れば、今回もあの時と同様に素晴らしいパフォーマンスだったということだけが残ります。

でも、3rdライブでの「in fact」と7thライブでの「to you for me」では決定的な違いがありました。

 

それは、「涙」です。

 

3rdライブの終演後、亜美菜さんは自身のラジオで3rdライブと「in fact」を披露した時のことについて語っています。

このライブで認めてもらえなければ、という想いで臨んだステージ。亜美菜さんは、ありすは泣かない!と、目に涙を溜めながら最後まで歌い切りました。感情を抑えるように衣装を握りしめるシーンはとても印象に残っています。

この頃の橘ありすは大人らしくいることを大切にしています。少なくとも、ステージで涙を流すことは当時のありすにとって子供っぽいことだったと思うんです。感情をコントロールできないってことですからね。

彼女にとって理想とする大人はどんな時もクールな人です。初めて立つ大きなステージでたくさんの光に感動しても、ありすはきっと涙をこらえながら最後まで歌ったと思います。多くのPさんがそう思っていたからこそ、"ありすがそこにいた"という評価に繋がりました。

 

この時の姿は、ありすをデレステで「in fact」のセンターへ編成した時の特殊演出や、SSR[はじめての表情]でも再現されています。

 

これをふまえて「to you for me」を振り返ると…まぁ振り返る必要も無いほどに印象的だったわけですが、終盤の亜美菜さんは明確に泣きながら歌っていました。

これだけ書くと、あの時の"ありすは泣かない!"はどうしたんだと思われるかもしれませんが、ここでポイントになるのが、デレステのフェス限として登場した[ありすの物語]です。

橘ありすが初めて自分の名前を受け入れた姿は、ありすPにとってもそうでない方にとっても、かなり印象的だったと思います。「橘です!」と言う姿は公式でも二次創作でもお決まりのようなセリフでしたからね。

ありすは、[ありすの物語]のエピソードコミュにて、自分の名前は適当につけられたものだったんじゃないかと思っていたと明かします。両親は多忙でしたから、なかなかコミュニケーションがとれない中で大きくなっていった不信感でしょうね。

その不信感に加え、名前の印象だけで子供っぽい、可愛らしいと言われて、それを覆そうと勉強をすれば生意気だと言われて。苗字にこだわる理由もよくわかります。

名前についての気持ちが変わったのは、プロデューサーに出会い、そしてアイドルとなったから。

今ではたくさんのファンが彼女を応援するためにありすと呼びます。ファンが見ているのは、好きだと言うのは、ありすという可愛らしい名前の女の子ではなく、橘という賢い女の子でもなく、橘ありすという1人のアイドルです。

 

橘ありすは、自分を認めてもらうことより、自分の姿を届けたいと考えるようになりました。

そう変化したありすがステージに立った時、そして自分の中の感情が溢れそうになった時、きっと我慢せずに自分の感じているありのままを見せると思います。

この幕張公演で亜美菜さんが見せた姿は、まさに自分の名前を受け入れたありすそのものだったのです。

だから今回も改めて言いましょう、ありすがそこにいた。

 

終演後、こんなことを考えました。

最初から泣くことを想定しながらステージに立つ方は、そんなにいらっしゃらないと思います。

でも、感情が昂って涙を流した時、今のありすはきっとそのままを見せようとするから、自分もその時の感情をそのまま出しても良いと亜美菜さんが考えていたとしたら…。

3rdの時の亜美菜さんの思い入れは知っていますし、その舞台で再び歌う、しかもソロの2曲目を初めて歌うというシチュエーションには特別な想いを抱かずにはいられないと思います。やっぱり当時のことを思い出したんでしょうか。

今回「to you for me」を歌うにあたって、どのように亜美菜さんが考えていたのか、次回のデレラジを楽しみにしています。

 

 

亜美菜さんのこだわりの中で、こちらも特に嬉しかったことです。

 

 

「to you for me」、そして[ありすの物語]の両方で大きな意味を持っているのが、童話の「不思議の国のアリス」で登場する金の鍵です。

原典にて、この鍵は最初に落ちてきた広間を出るために使われます。その鍵を使うまでのアレコレはまさにアリス第1章と呼ぶに相応しく、亜美菜さん自身がフェス限登場当時にTwitterで書いていた、ありすにとっての第2章が始まることの象徴です。

[ありすの物語]のルームのセリフでは「この鍵はもう、あなたのものです」と言ってくれますし、「to you for me」では歌いかける対象が「心の鍵ひらいて 前だけ見る勇気くれた」人です。

そりゃあPさんの中にこの鍵を贈る人が複数出ることももよくわかりますし、亜美菜さんが歌う時にこの鍵を身に着けるわけですよ。

 

 

ラストへ入る前にある2回の「あのね」。

CDで何度聴いてもグッとくるあそこの歌い方は、スクリーン越しでも本当にあの時リアルタイムで見ることができて良かったと思います。

佐藤亜美菜さん、改めてありがとうございました。

この感謝を持って、ここまでつらつらと並べてきたライブでの「to you for me」を締めくくろうと思います。